前回の記事で、財務の最も重要な役割である資金繰り管理について解説しましたが、本日はそれを補完する流動性管理について解説します。
流動性リスクとは
流動性リスクとは主に金融機関で使われる用語になり、金融機関が必要以上の資金を運用に回してしまい、予期せぬ資金流出に対し、不当に高い金利での資金調達をせざるを得ないリスクになります。
事業会社においては、手元に置いておく預金が不足し、短期の支払に対応できなくなるリスクを指します。
流動性リスクについては2種類に分けられ、資金の入金と出金の予測を見誤る“資金流動性リスク”と突然の経済変動により資金調達ができなくなる“市場流動性リスク”の2つがあります。
流動性リスクへの対応
流動性リスクに対応するためは、手元に一定量の資金を確保する必要があります。
手元に一定量の資金を確保しておけば、予定された入金が突然なくなったとしても、行う予定であった資金調達ができなかったとしても、しばらくの間、支払いは続けられるからです。
流動性リスク管理とは企業の資金循環の安定性を確保するためのものであり、安全にオペレーションを行うにはいくら手元に安全資金を持つかを決める議論になります。
安全資産とは何か
安全資産をどれくらい持つかという議論に入る前に、安全資産とは何かを説明したいと思います。
安全資産について、財務用語では手元流動性と呼ばれ、現金に換金性の高い資産のことを指します。現預金でなくても、換金性の高い資産であれば手元流動性にカウントするのです。
そして、一般的に手元流動性は現預金と短期の有価証券等のすぐに換金できる資産の合計で算出されます。
手元流動性をいくら持てばいいのか
一般的な手元流動性の目安としては、大企業の場合は月商の1ヶ月強、中堅企業の場合は1.5ヶ月、中小企業の場合は1.7ヶ月分と言われていますが、その根拠に明確なロジックはなく、未だ手元流動性を何ヶ月持てばいいのかについては明確な答えがありません。
おそらく、流動性リスクについては個々の企業の状況により大きく左右されるため、明確な答えが出せないのではないかと思います。
実際に手元流動性に関しては企業の状況によって大きく左右されるため、上記の数値は目安とし、自社の状況を把握した上で設定することをおすすめします。
予測される流動性リスクとは
ここまで読んで、あなたは自社の流動性リスクをどの程度認識されていますでしょうか。
特に自社は大企業で売上も安定していて、流動性リスクはほとんどないと認識している方もいらっしゃるかと思いますがそうではありません。大企業においても流動性リスクは起こり得るのです。
下記に実際に流動性リスクが起こり得る具体例を挙げます。
資金流動性リスク(資金予測が大幅に外れる) 例
資金の入出金の実態が予測と外れ、資金繰りが大幅に悪化する例が下記が挙げられます。
- 売上不振
- 大口取引先の倒産
- 急な支払いの発生 等
特に掛け売りではなく、現金商売をしている会社については、売上の変動がそのまま入金の変動につながるため注意が必要です。また、大口取引先への依存度が高い場合も、取引先の倒産が入金の減少につながるため注意が必要になります。
市場流動性リスク(資金調達が困難になる) 例
突如、資金調達が困難になり、流動性リスクが発生する例は下記が挙げられます。
- 主力製品のリコールの発生
- 社内での不正の発覚
- 規制の変更等によるマーケットの大きな変化
- リーマンショックのような経済状況の悪化
通常、企業は借入により運営がされていて、ある一定の周期で借入の更新を行っていますが、このような突然の出来事により、資金調達が困難となる場合もあります。
問題の程度にもよりますが、このような期間においては、新規の借入をすることが容易ではありません。銀行側にも承認プロセスが必要で、事態の全容が把握されるまでは、新規の借入が承認されず、資金の供給がストップしてしまうのです。
大企業でも安心とは限りません。実際にリコール問題や会計不正はどこの会社でも起こり得るのです。
自社の状況にあった流動性リスク管理を
上記で手元流動性の目安を大企業の場合は月商の1ヶ月強、中堅企業の場合は1.5ヶ月、中小企業の場合は1.7ヶ月分としましたが、こちらはあくまで目安であり、手元流動性は自社の状況をもとに決定することが必要です。
考えるためのヒント
自社の手元流動性を考えるためには、流動性リスクに対する耐性と方針を考えてみましょう。
あなたの会社の売上は季節、景気、流行の変動の影響を受けやすいでしょうか、販売先は大口の数社に依存していないでしょうか。
これらの外的要因により、入金が大きく変動するのであれば、手元流動性を多めに持つ必要があります。
また、あなたの会社は資金循環について、効率性を重視するのでしょうか。安全性を重視するのでしょうか。
資金効率を考える上では手元流動性は最小限に設定するほうが好ましく、一方、安全性を重視するのであれば、手元流動性は多めに設定する方が望ましいです。
まとめ
流動性リスク管理とは、企業が資金循環を安全に行うにはどのようにすべきかであり、主にはいくら手元流動性を持つかという議論になります。
急な環境の変化によって、予定されていた入金がなくなったり、資金調達が困難になった際も、銀行に状況を説明し、資金調達余力が回復するまでの間、資金ショートをしないようにするのが求められます。
手元流動性をいくら保有すべきかについては一般的な目安はあるものの、明確な答えがなく、自社の状況に応じて決めるべきであります。
この流動性リスク管理についてはまだまだお伝えすることがありますので、次回の記事で続きを記載します。![]()


